2011年6月2日木曜日

たんぽぽ舎より 地震と原発事故情報その85

      ◆ 地震と原発事故情報 その85 ◆

          4つの情報をお知らせします(6月1日)


   ★1、「がんばろう日本」どころでない  山崎久隆
   ★2、安全怠った東電は全額賠償を    槌田 敦
   ★3、6.11シンポジウムのご案内
   ★4「ホントに環境にやさしい電気とは?」配布遅れのお知らせ




★1「がんばろう日本」どころでない
                                            山崎久隆

放射能ストレス

 ちまたには「がんばろう日本」というスローガンが氾濫している。私はこの言
葉が嫌いだ。ものごとにはがんばれないこともある。がんばってはいけないこと
もある。津波や地震に、何をどうがんばれというのかと皮肉を言っているのでは
ない。「がんばろう」という一言が、場合によっては、人によっては、大変大き
なストレスを与えることになるからでもあるが、さらに放射能に対してがんばれ
というのはお門違いだからでもある。放射能に対しては「逃げろ」しかないのだ。
 福島県内には、高い汚染地帯に多くの子どもたちが取り残されている。国が3.
8マイクロシーベルト/時を活動制限値としたため、この値を下回っていると通
常生活が可能としているが、言い換えるならば「この線量まではがんばれ」と言
っているに等しい。
 放射線恐怖症という表現を文字通り使っている人間がいるのだ。長崎大学の山
下教授は福島県が任命した「放射線健康リスク管理アドバイザー」として各地で
講演をしているようだが、その中で「偏見や先入観、知識のなさが放射線恐怖症
を引き起こしている」と触れ回っている。放射線を正しく怖がることは必要だが、
カラ元気で無用な被曝をして良いはずが無い。さらにこの人物「国が20(ミリシ
ーベルト)という指針を決めたのだから、それに従うのは国民の義務」とまで言
い放ったという。
 なお、山下教授は100ミリシーベルトまでの被曝は健康に影響が無いという立
場なので、まして20ミリシーベルトには何の問題も無いという立場だ。もちろん
大人だろうと子供だろうと全く区別しない。
 このような発言を基準とされたら、多くの人は大変な恐怖を抱く。それに対し
ては「信じろ」というだけだ。基準は安全かと問われても「安全と言うことは簡
単に言えない」としながら、これを基準として受け入れ、安心せよと「アドバイ
ス」する。なるほど、信じてしまえばストレスは無いというわけだ。そんなもの
は科学でも何でも無かろう。健康被害は信じたからと言って回避されるわけがな
い。精神的ストレスにしても、原因を取り除かないで「気のせい」のごとくに取
り扱うことが、PTSDを悪化させることを指摘している文献は多い。放射線被
曝は痛くもかゆくも無いかもしれないが、被曝をしたという事実は確実に人々の
心をむしばむ。
 そのうえ、文科省は信じがたい文章を配布している。その中には「放射線恐怖
症」と捉えかねない表現がある。ほぼ山下教授の主張に沿った内容である。
 国はトンでも発言の山下教授の100ミリシーベルトまでの被曝は健康に影響な
いというところを「いや20ミリを基準としている」として、それよりも配慮して
いるかに振る舞うことで、健康に重大な影響を与える恐れのある基準だという私
たちの主張に対抗しようとしているようだ。

米国の規制値は3ピコキュリー

 良く比較される米国の水道水規制値は、3ピコキュリー/リットル(以下全て
リットルあたりを省略)であり、これは日本の規制値のおよそ千倍も厳しい。
日本の乳児暫定指標は100ベクレルであり、1ベクレルは27ピコキュリーに相当
し、100ベクレルはおよそ2700ピコキュリーに相当する。
 米国が西海岸などに到達した放射能について水道水への影響などを懸念したの
は、これだけ厳しい基準を持っているからだ。日本では3ピコキュリー(逆に言
えば0.1ベクレル)であれば最大検出時に、ほぼ東日本全域で規制値を超えるこ
とになったからだ。
 世界の水道水の基準はどうなっているのだろう。
 WHOの基準は1ベクレルで、高いほうに位置するが、それでも日本の100分
の1、ドイツは0.5ベクレル、日本も実は3・11以前はWHO基準に準拠して
いたが、今回の大規模放出により一般300ベクレル、乳幼児100ベクレルの暫定基
準を設定した。

五重の壁はもうない

 原発の安全性を説明するときに、放射能は五重の壁により封じ込められている
と言われてきた。しかし今はその壁が全て破壊されている。チェルノブイリ原発
事故もそうだったが、チェルノブイリ原発は「格納容器がない」などとされてい
た。五重の壁が全て突破されたのは史上初めてのことなのだ。
 特に深刻なのは、今も冷却が完了していないことだ。冷やし続けなければメル
トダウンが進行し、格納容器も破壊し、封じ込めることは出来なくなる。
 現在、燃料が溶け落ちた1、2、3号機の圧力容器内部は、粉砕された燃料が
下に堆積している。3号機に至っては、崩れた燃料がシュラウドの内側に堆積し、
冷却用の水がシュラウドと圧力容器の間にとどまっていると見られている。その
ため冷却能力に支障を来しており、圧力容器の真下が破断してしまう危険性があ
る。そうなればもはや格納容器が破壊されるのは時間の問題となってしまう。
 燃料の全溶融により圧力容器が破壊され、格納容器も貫通していたことで、冷
却に水棺方式をとることにも意味がなくなった。水浸しそのものが不可能になっ
ただけでなく、大量の冷却材投入は汚染水を際限なく増やし、環境への大量漏え
いが避けられない事態となるからだ。
 燃料をいわば「漉しとっている」のに等しいため、セシウムだけでなくストロ
ンチウムやプルトニウムも漏出することになる。それが海に流れ出せば、取り返
しのつかない大規模汚染になってしまう。
 既にこれまでに政府発表でも520トン、4700兆ベクレルもの放射能を放出した
とされる。高レベル汚染水を溜めるためとして意図的に放出され、周辺諸国から
批判された集中廃棄物処理施設の1万トンを超える廃液は全体でも0.1兆ベクレ
ルだったのだから、その規模のすさまじさが分かるというものだ。このうえ1立
方センチあたり100万ベクレル規模の廃液を1万トンも放出したら、いったい太
平洋はどうなってしまうのだろうか。

★2、安全怠った東電は全額賠償を     槌田 敦

「『東電免責されない』は本当か」〈24日 朝日新聞〉は、無過失で以上に巨大
な天災の場合に免責されるという原子力損害賠償法の規定を根拠にしている。
だが、福島第1原発の事故は無過失ではない。緊急炉心冷却システム(ECCS)
の「欠陥」を放置したのが原因だと思う。ECCSは原子炉に異常が生じたとき、
炉心を冷やす重要な任務を持っている。
だからECCSはそれぞれの原子炉につき、複数の系統が用意され、1つが不具
合でももう一つが働くように設計されている。
ところが第1原発の1号機から4号機までのすべてのECCSは津波対策が十分
ではなく、電源を喪失した。東電はこの欠陥を知っていたのだろう。5号機と6
号機ではその一つを高い位置に置き、大きな事故にならずにすんだ。
1号機から4号機は改修にお金がかかるからか、そのままにしていた。東電が安
全対策をけちって起こした過失事故なのだ。
東電の全額負担で、全資産を売り払ってでも償うべきである、(朝日新聞5月31
日声欄より)

★3、6.11シンポジウムのご案内

6月11日の芝公園でのデモに参加させていただく「市民連帯の会」の三井環で
す。
私共「市民連帯の会」では午後からのデモの前に、下記要領にてシンポジューム
を開催いたします。もし宜しかったら貴団体の皆さまにシンポジューム参加のお
呼びかけをお願いできれば幸いです。大変恐縮ですが宜しくお願いいたします
なお入場料は無料ですが500円程度のカンパをお願いできればと存じます。

☆「脱原発」シンボジューム☆
◎日時:6月11日(土)午前10時20分~午前11時30分
◎場所:四谷区民センター(450人収容)
      (地下鉄丸ノ内線「新宿御苑前」駅徒歩5分)
    東京都新宿内藤町87番地/03-3351-3314
◎出席者:森ゆう子氏、三上治氏ら国会議員、ジャーナリスト5・6人
◎主催者:「市民連帯の会」
〒110-0015 東京都台東区東上野6丁目1番4号イワツキビル201号
     TEL03-3844-8722 FAX03-5827-3132  siminrentai@goo.jp
     http://www.wb.commufa.jp/simin/rentai/


★4、お知らせ
 ・「ホントに環境にやさしい電気とは?」配布遅れのお知らせ
  おかげさまでたくさんのご注文を頂き、あっという間にたんぽぽ舎預かりの
 分(1万部)は終了いたしました。追加分が届くのは、3日後です(6月4日)
  (これは正誤表入りです。)
  訂正済み版の増刷も致しますが、仕上がりは、約半月(6月中~下旬)先と
 なります。また、お知らせいたします。
 ・「原発を並べて自衛戦争はできない」―原発と憲法の関係―
 (山田 太郎さん著 小冊子)をお分けします。(一人5部まで)(無料)

      送料   1~5冊 100円

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