2011年5月16日月曜日

たんぽぽ舎より 地震と原発事故情報その69

     
                 ◆ 地震と原発事故情報 その69 ◆

        2つの情報をお知らせします(5月15日)


  ★1「原発は憲法違反である」  大河原礼三
  ★2 話ははっきりさせなければならない。(被曝線量その3)
                   山崎 久隆



★1「原発は憲法違反である」  大河原礼三

▲憲法前文は「恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利」を宣言して
いるが、原発は放射能被害の恐怖と不安と人命破壊を引き起こして平和的生
権を侵害する。
▲憲法は13条で「生命、自由および幸福追求に対する国民の権利」を保障し、
22条で「居住の自由」を保障し、25条で「健康な生活を営む権利」を保障
し「公衆衛生の向上と増進」を目指しているが、原発は放射能汚染によって健
康を破壊し、飲食物の摂取を危険にし、それらの生産者の生活を脅かし、地域
住民を転居させるなど、生命権と健康権と幸福追求権と生活権と居住権を甚だ
しく侵害する。
▲憲法18条は「何人も、その意に反する苦役に服させられない」と規定して
いるが、原発作業員は、日常的に放射能の危険に曝され、事故のときには、そ
の犠牲者にさせられるのであるから、彼らの労働は憲法が禁止している「意に
反する苦役」である。
▲憲法21条は「表現の自由」を保障し、23条は「学問の自由」を保障して
いるが、国の原発政策は、原発に批判的な意見の表明を抑圧し、批判的な研究
を抑圧してこれらの自由権を侵害し、国民の「知る権利」を侵害する。
▲憲法98条は「日本国が締結した条約および確立された国際法規は、これを
誠実に遵守することを必要とする」と規定しているが、福島原発が放射性廃棄
物を海洋投棄したことは、海洋投棄に関する国際条約に違反している。
電力会社は大地震の際に原発事故を防ぐ能力がないことを露呈し、原発は憲
法違反を不可避的に引き起こす制御不可能な危険物・暴力源であることが明ら
かになったのであるから、原発は当然法律で禁止されるべきである。
                            (2011.4.17)

編集部から:新聞に投書された原稿で、優れた内容です。しかし、大手新聞
には残念ながら載りませんでした。(不採用)
 原発は憲法違反であることを具体的にフクシマ事故に即して書かれた内容で、
広く皆さんに知っていただきたく、著者の了解を得て掲載します。(柳田)


 ★2 話ははっきりさせなければならない。 被曝線量その3
                        山崎久隆

 この間の学校の放射線許容量が大混乱を来している。その間の事情は、週刊
ダイヤモンド誌に詳しいが、要は「2007年ICRP勧告の国内法整備が出来ていな
いうちに重大放射性物質拡散事故が発生したため、ICRP勧告に沿った考えを持
つ専門家とそういう考えに反対する専門家が時々で報道で、あるいは国の会議
などで個々が勝手な主張をするため、何が正しいか誰にも分からなくなってい
る」ことが大きかったということ。
 勝手な主張の最たるものは「100ミリシーベルトまでの被曝は何の影響も
ない」というもの。さらに加えて「低線量の放射線は人体に有益」ということ
を付け加えるものさえいる。
 実際のところはその1とその2で述べたとおり低線量の放射線はむしろ直線
モデルの影響よりも有害性が高い可能性さえある。
 ICRPは、ではどう言っているのだろうか。これについても、人によっては大
きなすり替えをしている場合がある。

 ICRP2007年勧告においては、「緊急時被ばく状況」から「現存被ばくの状
況」という概念を用い、緊急時で逃げ惑うような状況「緊急時被ばく」から、
一定の落ち着きを取り戻した、事故収束段階に移行し、その段階で一定の濃度
の放射性物質による汚染が残った状態を「現存被ばく」という。
 では、勧告本文の重要部分を訳してみる。
 この項目は、現存被ばくの基準を勧告している部分だ。

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ICRP Publication 111

P11

(o) The reference level for the optimisation of protection of people
living in-contaminated areas should be selected in the lower part of
the 1-20 mSv/year band recommended in Publication 103 (ICRP, 2007) for
the management of this category of exposure situations. Past
experience has demonstrated that a typical value used for constraining
the optimisation process in long-term post-accident situations is 1
mSv/year. National authorities may take into account the prevailing
circumstances, and also take advantage of the timing of the overall
rehabilitation programme to adopt intermediate reference levels to
improve the situation progressively.

http://www.icrp.org/publication.asp?id=ICRP%20Publication%20111

(o) 汚染地区内に生活している人々の防護の最適化のための基準レベルは、
この被ばく状態の区分に関する管理についてパブリケーション103(国際放
射線防護委員会2007)で勧告された1~20mSv/年の幅の下の方で選
択されるべきです。過去の経験により長期間にわたる事故後の状況で最適化過
程を拘束するために使われる典型的な値が1mSv/年であることが明示され
ています。国の機関は現地の一般的状況を考慮に入れて、そして次第に状態を
改善するために中間の基準レベルを採用するため全体的な復興計画の時間を設
定することを採用してもよいです。
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敢えて直訳にしているが、これにより、ICRPは「20ミリシーベルトを基準」
になどしていないことが分かる。あくまでも1~20の間で「下の方」と言って
いるから、まともに読めば1~10ミリシーベルトに相当する。原子力安全委員
の中に10ミリシーベルトを基準にすべきといった人がいたようだが、おそらく
ICRP勧告をそのまま適用しようと思ったのかもしれない。
 10ミリシーベルトを一般居住の基準とし、10~20ミリシーベルトまでについ
ては、他の項目から推察するに「個人被ばく管理をしたうえで、汚染除去や原
状回復などの特定の作業過程において暫定的に居住を認めても良い」とも読め
る。
 もちろん子供の被ばく基準など、この中では一切言っていない。
 このどこをどう読めば「20ミリシーベルトまで許容される」と読めるのか。
 ICRPの基準さえ逸脱しているのが、今の文科省・厚労省基準なのである。

 福島原発震災は、まだ終息さえしていない。従って、「現存被ばく」と呼べ
る状況にさえなってない。緊急避難を必要としている段階なのだから、むしろ
もっと厳しい基準を特に乳幼児、子供や妊婦、免疫機能が弱い人たちに対して
適用すべきであろう。それは年間1ミリシーベルトを超えてはならないとすべ
きだろう。

 なお、筆者はICRP勧告は低線量被曝リスクを過小評価しており、採用すべき
では無いと考えている。しかしながら現状はICRP勧告さえ逸脱したとんでもな
い状況なので、敢えてICRP勧告の内容解説を試みた。

    その3の掲載が遅くなりました。1,2と合わせお読みください。

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